RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

最高の求人広告

 1900年、ロンドンの新聞に小さな募集広告が載った。

「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る。-アーネスト・シャクルトン-」

MEN WANTED for Hazardous Journey. Small wages, bitter cold, long months of complete darkness, constant danger, safe return doubtful. Honor and recognition in case of success - Ernest Shackleton.

 ご存知の方も多いと思うが、世の中に広告と言うモノが出来て、今までの中で最高と言われる求人広告である。写真やイラストもなく、コピーといってもカンマでブツブツと区切っただけ、仕事の内容も誰もが避けて通りたい、最低な条件が羅列してある。しかし記録によると、この小さな求人広告の反響は大きく、新聞社には一日中問い合わせが続いたという。

 1900年、日本では明治33年。英国との間に「日英同盟」が結ばれる2年前の、世界中が覇権を競いナショナリズムが高揚した時期だったからだろうか。イギリスで暮らしていてもどっちみち「僅かな報酬」に変わりなければ、名誉と賞賛のインセンティブがあった方がまだマシ、と考えたからだろうか。そんな時代背景があった事を考慮に入れ、見直してもいまだに心臓を鷲掴みされるような名コピーです。

 現在のこの時代にこんな求人広告出したら、給料はいくらで社会保険と有給はよ?、と激しく突っ込みが入りそうですが、個人的には待遇だけで仕事に就く人よりも、自分の目的を遂げるために仕事に就く人の方が、長く付き合っていけそうです。




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