
私が70年代の半ばに、グラフィックデザインを学んでいた頃、1963年に出版され、教材にも使われていた『フォルクスワーゲンの広告キャンペーン』(美術出版社)と言う本がありました。
主にLIFEやTIME・ニューヨーカーと言った雑誌に掲載されていた広告をまとめてありますが、制作していたのはDDB(ドイル・デーン・バーンバック社)という広告代理店です。
当時広告の制作手法と全く異なるアプローチで作られた広告で、掲載された当時はアメリカ国内に大きな反響を与えた広告キャンペーンでした。
その広告を日本に伝えたのが、TTCの名誉殿堂入りされた元コピーライターの西尾忠久さんです。
この本は、私たち広告を創る側の人間からバイブルと言われていた本で、80年代に入った頃には古本屋でも見つける事が難しい状態でした。
この本に収められている広告作品は、他社が新しい商品(車)にすると楽しい未来が、テレビドラマのような生活が手にはいるよ。
とイメージ訴求していた頃に、商品の優位性で他社との差別化をしたコピーと、奇をてらわないシンプルなビジュアルで構成された、現在の広告の原点と言える作品ばかりです。
このコラムタイトルにもある『親愛なるチャーリー』も、コピー制作に行き詰まった時のアプローチとして、広告を見る顧客を聡明な友人として仮定し、彼に説明するように書き上げ、最後に最初の一行のチャーリーを消せば成り立つなど、制作に対する見習うべき点が多数あります。
そんな本がKKロングセラーズ社から、新書として昨年12月に『クルマの広告―大人のための絵本 (ロング新書)』として発売されました。
値段はたったの¥950。
広告として発表され50年近く経った物ばかりですが、今見ても新鮮で説得力のあるコピー、見る者にスッと入り込むビジュアルなど、制作者だけではなく企業の広報やブランディングを担当する方達にも、一読していただきたい本です。
RISE Production

先日メルセデス・ベンツ日本がアイドリングストップ機構採用の「スマート・フォーツーmhd」を、12月に発売すると発表しました。この「mhd」とはマイクロ・ハイブリッド・ドライブの略で、現在トヨタ自動車やホンダで発売している、ガソリンエンジンをモーターでアシストするハイブリッドとは一線を画しています。どのようなハイブリッドかと申しますと、アイドリングストップ。
なんだベンツが創るハイブリッドだから、もっと驚くような技術てんこ盛りかと思いきや、頻繁なエンジン始動に強いバッテリーと、アイドリングストップ機構を制御するコンピューターで成り立っているものです。厳密に言いますと電気を効率よく作るオルタネーターと、スターターモータも違うそうですが。
いま日本でハイブリッド車と言えばトヨタ自動車のプリウスを思い浮かべますが、こちらの機能としては、ガソリンエンジンでは効率の悪い領域をモーターでアシストし、クルマ全体としてエネルギー効率を高くしようと、ブレーキング時に運動エネルギーを電気エネルギーに回生する装置もあり、非常によく考えられた、開発に時間もお金もかかっている製品です。
一台の車としての10・15モード燃費の効率はどうかと、比較してみると。
スマート・フォーツーmhd:23.0km/リッター
トヨタ自動車「プリウス」:35.5km/リッター
やはり根本から効率を重視して開発してきた「プリウス」にはかないませんが、軽自動車の多くが21〜23km/リッターの燃費ですから、高速道路での高負荷走行を考えた欧州車としては、かなり立派な数字です。しかし技術を一から開発した「プリウス」と、既存技術を集め製品にした「スマート」では、回収すべき開発費は天地ほどの違いがあるでしょうし、従来モデルからの加算される値上げ幅も少なくてすみます。
因みに「スマート」の従来のモデルから、どの程度効率化が進んだかは、 10・15モード燃費は従来の18.6km/リッターから約24%向上して23.0km/リッター、との事です。中長期な観点からすれば、現在の技術をブレークスルーしていく新しい技術開発は必要です。しかし自社に技術の蓄積がない場合でも、使い慣れた技術を組み合わせる事で、社会のニーズにあった商品を開発する事は可能です。
昨日のコラムにも書いたように、全ての利益を株主に還元ではなく、技術開発への投資をした上でイノベーションは継続的に続けて行くにしても、マーケティングの視点から既存技術を使った、新しい商品を開発する事も企業として考えなくてはいけません、脳みそにもっと働いてもらいましょう。
RISE Production

物を創るクリエイティブの端っこで生きている者として、先日読んだ本で、日本語という言葉の持つ力、可能性、奥深さ、柔軟性を含んだ素晴らしい言語だと言うことを、頭を殴られたみたいに、力業で教えてくれたのが本書です。新宿の本屋だったでしょうか、平積みにされた短歌集はあまり見ないし、と言うか俵万智ぐらいしか見たことありませんが、表紙の蝶の絵が印象的で手に取り、中を2〜3行読んで購入しました。
短歌という五・七・五・七・七の三十一語で構成する、俳句や詩とは又違う表現方法ですが、最小限の言葉の中に、歌を見る人にその場の情景を頭に呼び起こさせ、詠み人の感情さえもその三十一語に凝縮して伝える、コミュニケーションの原点とも言える短歌集です。
日本語には一つの単語でも「ひらがな」「カタカナ」「漢字」と使い分けることで、伝えたいと思う表現が変化します、例えば「フランス」と国の名前を書くのと「仏蘭西」と漢字で表現するのとでは、受け手が感じる受取方も変化します。日本でコミュニケーションをクリエイティブしていく職に就く者は、この単語を自由自在に使いこなし、様々な情景を変化させ、日本語という言語を使いこなす必要があります。
この本の著者は、元電通のクリエイティブ・ディレクターをされていた方ですが、その使いこなし方は感動すら覚えます。納められている歌は全て新聞の短歌欄に掲載された物で、選者の評も併記されている物もあり、あまり短歌を読む機会のない方にも理解されやすい本になっていると思います。
クリエイターとして、写真や絵画、映画や演劇など、心の感じる物を数多く見、感動することが物を創っていく上での一つの糧であると信じています。コピーライターだけではなく、全てのクリエイターに読んでいただきたい一冊だと思います。
一応詳細を、投歌選集 過去未来
著者:吉竹純 発行所:河出書房新社 ¥1,600 ISBN978-4-309-90814-4
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