RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

縮小した写真の著作権の扱い

Q:縮小した写真の著作権の扱い


とあるポータルサイトと契約をしようとしているカメラマンです。
質問内容は「納品する縮小写真データの著作権を譲渡すると、原本も自分のモノではなくなるのか?」です。
いろんなお店に出向いて撮影をし、それを縮小した画像データをサイト運営会社に納品する、との内容で話しが来ております。
その契約書の中には「全ての著作権は無償譲渡していただきます。著作者人格権の行使は出来ません」と記載されています。
まだ契約書にサインはしていません。
納品するのはWEB用なので小さい画像(200万画素程度)だけで良い・・・との話しです。しかし、撮影データの原本は2000万画素クラスで印刷物や大きなポスター、屋外広告などにも使えるサイズです。これまでの経験で撮影した後に「あの写真を看板に使いたい」と言われるケースがあり、原本データを別途販売の形式を取っておりました(著作権が自分にある)。
通常であれば原本ごとの買い取りで単価を上げていただきますが、縮小サイズだけで良いので値段を安くして欲しい・・・と運営会社からは言われます。

そこで質問ですが
この場合、著作権を譲渡するとは、納品する小さな写真とともに大きいサイズの原本もサイト運営会社のモノになるのでしょうか?原本の販売権を主張しても法律上おかしくないのか教えていただけますでしょうか。

A:正当な主張です


シロクマカメラさん、はじめまして、こんにちは。ライズプロダクション佐藤です。

ご質問の「著作権を譲渡すると原本も自分の物ではなくなるか」ですが、著作物には著作者人格権があり、日本が批准しているベルヌ条約上では、「著作権が他者に移転された後も著作者が保有する権利」とされています。また、この著作者人格権は、一身専属性を有するとあり、日本の著作権法59条でも他人に譲渡できないと規定されています。

実際の著作権法は、電子政府のポータルサイトでも確認が出来ます。このページの第二章:著作者の権利の第五節:著作者人格権の一身属性等


現在日本で運営されている、フォトエージェンシーなどは、Webを使って世界中にサービスを提供していますので、著作権はベルヌ条約が基本で結ばれています。

契約書が日本国内で交わされる場合は、日本の法律に従う義務がありますので「著作者人格権は行使できません」の一言は無効になります。

この運営会社のやり方ですと、渡した画像の著作権・公表権・著作者人格権の全て運営会社が持つようになり、運営会社の判断で二次販売も可能になってしまいます。

つまりシロクマカメラさんの知らない間に、譲渡した覚えのない媒体に使用される可能性もあると言うことです。

ですから契約書には、「契約書は日本国で定められた法律のもと成立します」「公表権は会社の運営するサイトでのみ認めます」と言った附加項目を付け、交渉されることをお勧めします。

画素数での値段は、写真の使用範囲を画素数でおのずと限定されてしまうので、ディスカウントの要求は当然かもしれません。著作権を含めた総合的な交渉で、双方の落とし処でまとまるのでしょう、いい条件で契約できるよう頑張ってください。

この事から原本の販売に関するシロクマカメラさんの主張は真っ当であり、著作権法の下でスムーズに交渉すべきと考えます。






このQ & Aは、All AboutPfoFileに届いた質問に対し、RISE Production佐藤が答えた物を転記しています。オリジナルページはこちら


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