RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

差別化というクリェイティブの考え方

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個人的なことを先に書かせていただくと、学校を卒業したのが1976年、ちょうど第二次石油ショックの頃で、今と同じくらいかそれ以上に就職難の年で、希望していたグラフィックデザイン事務所には就職出来なかった。

その替わりと言っては何だが、大型商業施設のプランニングから施工まで行う設計事務所に就職し、グラフィックデザイナーになったのは80年代の半ば頃だった。

商業施設のプランニングからグラフィックデザインへの転換は、思考方法から携わる期間なども全て異質な物で、手取り足取り鞭打たれながら指導いただきました。

一番印象深かったのは、メーカなどから依頼され広告を作る時に、一番のポイントとなる広告の切り口、メインビジュアルの作り込みの仕方や、キャッチコピーの考え方などで、競合他社との差別化をいろいろな視点で表現する事。

バブルの頃は、それこそ戦場のように忙しく、夜中も12時を過ぎてからコピーライターとのミーティングなどは当たり前「明日の朝まで100案作って持ってこい」などと、厳しい修業時代でした。

良く先輩に言われたことは、例えばメーカーの商品デザイナーの視点で、デザインした強みの部分を切り口に作り込むのか、販売担当者の視点で値段と機能を比べた優位性の切り口で作り込むのか、ユーザー視点で見る人に共感を得られる視点で作り込むのか、相手に伝えるための基準を変化させ考えないと、限られた時間で沢山の優れた企画は立てられないと。

例えばポケットの中にある数枚の10円硬貨を取り出し、ここにある全部の10円硬貨が依頼を受けた製品を取り巻く競合環境で、手前の最後の一枚が今回仕事を受けた製品だ。

みんな同じ10円硬貨だけど、最後の10円をどのように他の硬貨との差別化を打ち出せるか。

一つだけどう差別化を打ち出すが、メーカーが競合と比べ優位と考えた附加機能にプライオリティが感じられるのか、それを表現するにはどの様なビジュアルだと効果があるのか、どんなイラストまたは写真が受け入れられるか、それが広告を見るコンシュマーにどう受け取られるのか、プランがロジカルで整合性がとれているかどうか。

製品としてのライフが長い商品は、見る人が感じているブランド感を少し裏切ることも効果があり、どの程度、どの方向に裏切ればいいのかも考えます。

もう今からじゃ考えられないほど頭を働かせ、今まで見てきた写真集や雑誌などの“これは”と頭の引き出しに仕舞い込んだものを全部使い、何案もカンプを作り提案しました。

コンセプトがロジカルで、クライアントにも理解されやすい広告が良い広告とは限りません。

時には見る人をグイグイと引っ張るパワーも必要でしょう、そんな広告をはじめとするコミュニケーションツールを作り、長い年月蓄積することで商品の、メーカーのブランディングが出来上がってきます。

どう表現していくか、その商品でも企業でもどんな視点で見た表現が、一番共感されるか、クリエイティブワークの切り口を替える視点が必要です。




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