RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

広報マニュアル:practical(04

3:報道機関への対応 ー 記者発表



1.記者発表の種類


新しく開発した商品・サービスが社会的に意義があり、しかも美しいデザイン・優れた機能を併せ持つ、とても素晴らしい商品・サービスを社会に送り出しても、報道機関は取材に来てはくれません。企業・組織から積極的に報道機関へ情報を提供し、記事にしてもらう事で多くの人々に広く知ってもらう事が大切です。

この記者発表には重要度から 1.記者会見 2.記者クラブ発表(レクチャー付)3.資料配付 の3つに分けられます。

1. 記者会見
記者会見には、記者クラブ主体に発表を行う場合と、それ以外のメディアを交えて発表を行う場合と2つに分けられます。後者の場合、記者クラブに加盟している新聞や通信社、放送局やそれ以外の雑誌や専門誌・業界紙の記者に、指定の場所に集まってもらい、企業のトップが自ら発表するモノで、重大ニュースを発表する時に行います。

2. 記者クラブ発表(レクチャー付)
記者クラブで発表するニュースを、経営トップまたは担当責任者がニュースに関しての補足説明が必要な時に行います。

3. 資料配付
記者に集まってもらうほどではなく、一定の書式に従って作られた発表資料(ニュースリリース)を、見てもらえれば理解していただけるような内容の時に行います。




2.記者発表の原則


1. 未発表のニュースである事
ニュースを公表する際に気をつけなければならない事は、社会に対し未発表の物であると言う事です。各事業部で制作した広告や、ポスター・パンフレットなど、記者発表前に公表しない、特定のメディアに情報が漏れ、憶測の情報を発表させないなど、情報管理が必要です。一度間違った情報が一人歩きすると、軌道修正に時間が掛かりますので、正確な情報を各メディア同時に公表する事が重要です。

2. 窓口は広報課一本にする
情報の交錯を防ぎ、窓口を一本化するために、広報課が各報道機関の窓口となり統括します。

3. 興味を持ってもらえるよう工夫する
公表したニュースを報道するかは、各報道機関の判断で決められます。新しく提供する商品・サービスが社会に対しどれだけ影響を与えるかなど、記者に理解してもらい、興味を持ってもらう事が重要です。

4. 窓口の広報課と綿密な打合せを
どのような記者発表でも、広報課では各部署からの詳細資料を基にニュースリリースを作成しています。その際、趣旨・内容を含め「どこまで公表できるのか」を必ず明確にして下さい。

5. 発表時期と方法は記者クラブ主体で
広報課と担当部署はニュースリリースを始め、発表の時期と方法についても打合せを行い決定しますが、記者クラブの都合で変更される事もありますので、変更を申し入れられても対応できるよう、記者クラブには早い時期に申し込む事が必要です。




広報マニュアル:practical(05

3.ニュースリリースの作り方


ニュースリリースとは、報道してもらいたいニュースを企業・組織から報道機関へ発信する事を言い、通常は報道機関にリリースする情報をまとめた資料を指します。このニュースリリースは、パンフレットのように理解してもらうようキレイにまとめた物ではなく、記事として紹介する事で社会的な意義があると認め、取材意欲をそそる内容が必要です。事実を正確に伝え、瞬時に内容が把握できるように、情報はコンパクトにまとめないと行けません。

1. 5W1Hの原則
文章を作る上での必要最低限の物で、皆さん既にご存知の物でしょうが明記しておきます。

いつ(When)
誰が(Who)
どこで(Where)
何を(What)
なぜ(Why)
どうする(How)

意義・社会性に触れる
ニュースリリースの目的は、宣伝ではありません。そのニュースの情報は新鮮か、社会的な意義は有るのかなど、記者に興味を持ってもらい、記事にしてもらうのが目的です。

専門用語を使わない
限られた業界などで使われる専門用語は、理解し合える人同士で使うならば、意思の疎通が簡単に行えるので便利でしょうが、一般人にとっては知らない国の言葉と同じで、コミュニケーションが取れません。この事から分かりづらい専門用語は避け、どうしても使う場合は注釈や解説を付ける必要があります。

誇張しない
先にも書きましたが、ニュースリリースの目的は、記事にしてもらう事で、売上向上を目的とした物ではありません。この事から情緒的な広告のキャッチコピーのような表現や、押しつけがましい表現は避けるべきです。小賢しい表現を使わなくても、記者が重大だと判断した記事には、それなりの扱いをされる物です。

写真や図版を添付する
言葉だけではなかなか理解できない物でも、写真を見れば一目瞭然。記者が理解しやすいよう、また、記事で使ってもらえるように写真や図版に説明書きを付け、添付すると効果的です。

発表当日の対応
記者発表した当日は、記事原稿締切の時間まで、記事を書く記者からの問い合わせに対応できる体制を取ります。記事を書くために記者が不明点を確認しようとしたところ、分かる者が居なかったために記事にならなかったと言う事もあります。この事から発表時間もあまり遅い時間に設定せず、対応の利く15時を目処に行うと良いでしょう。これは記者発表にとどまらず、資料配付に関しても言えますので、ニュースリリースを配布してお終いではなく、発表当日は詳細を理解し、担当部署として発言できる者が問い合わせに備え、19時頃までは待機してください。




広報マニュアル:practical(06

3:報道機関への対応 ー 取材



1.取材の種類


取材については大きく以下の4つに分けられます。

1)当社に直接関係するニュースの取材
a. 記者発表などで既に発表された事業や計画についての確認・再取材
b. 事故や事件に関する事実確認(後述 Sec.3 緊急時の広報対応策を参照)
c. 未発表の件について、探索・取材確認
 この場合、取材内容によっては限度を設ける必要があります。

2)当社とは直接関係のない、事件・事故などニュースの背景への取材

3)コメント取材
 当社として、政治・経済などの社会情勢への意見や見解などを求められる事があり、ステークホルダーへの影響如何によって正式なコメントを出す場合があります。

4)番組の撮影強力

 マスメディアから当社に対し、上記の取材依頼が考えられます。この様な依頼が直接担当部署へ来た場合には、直ちに広報課へ連絡してください。担当者と広報課で協議し、取材を受けるか決定しますので、部署毎で直接取材に応じる事は避けてください。




2.取材を受けるチェックポイント


 取材を受ける上で注意しなければいけないポイントは、記者に対し誠実に対応し、率直な会話を心がける事です。取材する記者も人の子です、性格や取材態度が好ましくなくても、取材を引き受けた以上、誠実な対応をしてください。

1)あれもこれもと欲張らない
 取材の申込を受けた時点で、取材意図とポイントから、答えをいくつか用意しますが、伝えたいポイントはあれもこれもとあまり欲張らずに、取材意図に対して理解してもらいやすい3〜4点に絞りましょう。インタビューの中で聞かれた事だけに答えると言ったことをせず、伝えたいポイントに話の流れを展開していくよう心がけましょう。

2)写真や資料などで正確に
 正確な記事にしてもらうために、主観的な話しはせずに資料やデーターを用意し、きちんとしたエビデンスを示すようにしましょう。まだ公表段階にない質問を受けた際には、追って連絡するとし、取材後関係者と調整し処理します。用意する資料やデーターは、記者に渡す事を前提に揃え、渡す事が出来ない資料は、見せないよう注意しましょう。また、業界用語・専門用語などはなるべく控え、社会の人が見て分かりやすい平易な表現に努めましょう。

3)曖昧な答えをしない
 答えたくない質問には、「役員会で決まっていないから」「検討中なので」など、きちんとした理由を記者に説明し納得してもらってください。推量で答えたり、曖昧な言葉で濁したりすると、記者への印象を悪くします。即答できない難しい、または複雑な質問を受けた時には、原稿の締切を聞きその時間までに回答するか、具体的な日時を決め、出来るだけ早く回答するようにします。

4)場合によってはリハーサルを
 取材を受けたあなたが、こんな記事に書いてもらいたいと頭に思い描くのと、記者が取材をし客観的な印象で上がった記事とが大きく乖離する場合があります。記事になってから「こんな事言ったつもりはない」と言っても後の祭りです。記者の書いた記事を事前に見る事は原則として出来ませんし、見せろと言うのは報道のマナー違反です。自分でこう書いて欲しいというイメージを元に、伝える正確な情報を作り、自信を持って答えましょう。

 自信を持って答えないと、納得させるために余計な一言を言ってしまう事もあり「今話した事は聞かなかった事に・・・」になりかねません。場合によっては社内の人間に事前に返答を聞いてもらい、どのような印象に聞こえるか、リハーサルをし自分の答えに自信を持つ事も必要です。

5)報道機関・記者と良好な関係づくりを
 広報課では、取材をきっかけに報道機関と良好な関係を保つため、記事が掲載されると電話などでお礼と感謝を伝えます。取材を受けた担当者も、記事をいち早く読み、その感想を出来るだけ早く広報課まで伝えてください。

 また、取材された内容を他社の記者に話す事は、してはいけない事です。記事になった後でも報道関係者には「あの記事は自分がニュースソース」と明かしてはいけません。

 記者にとってニュースソースは財産であり、それを漏らすと言う事はモラル違反と考えているからで、それを明かす会社は「モラルを守らないルーズな会社」という悪印象を与えてしまいます。




広報マニュアル:practical(07

3.電話による取材


1)相手を確認し、広報課へ連絡
 報道機関から直接電話で取材依頼が入ったら、その場ですぐに応じる事は避け、まず取材内容と報道機関名・記者の氏名・所属・連絡先(電話番号)を確認し、折り返し広報課から連絡する事を理解してもらい、一度電話を切ります。広報課や関連部署と連絡を取り、対応を協議した上で報道機関へ折り返し連絡するようにしてください。

2)たらい回し厳禁
 担当者が不在だったり、他のセクションへ引き継ぐ場合などで電話の“たらい回し”は、日頃の顧客への対応態度と同等と思われ、記者の心証を害するばかりか、企業の対外的な対応が不十分との印象を与えてしますので、絶対に避けなければいけません。

3)出来るだけ面談取材で
 電話での口頭によるやり取りは、人名や数字など、取材内容が複雑で立ち入った事柄の場合、間違いや誤解を招くおそれがありますので、電話による取材は極力避け、面談による取材にしていただけるよう心がけましょう。

4)コメント取材には考えをまとめてから
 コメント取材とは、関連業界などで社会的に大きな事件・事故などの大きなニュースが発生した時に、それに対する反響を取るために、業界を代表する意見を求められ、「この件に関して○○氏は××と述べています」と言った形で掲載される記事です。

 どちらかというと記者の社会観にもよるでしょうが、一部世論を補足するための記事に使われたり、記者の意図とする方向にバイアスが掛けられたり、増長させるようオーバーに書かれたりする事があります。このためコメント取材の場合、発生した事件や問題を良く把握し、発言内容をロジカルに整理し、頭に入れてから明確に話しましょう。考えをまとめきれずに曖昧な発言になった場合、伝えようと思った事と異なるコメントとして使われる可能性もあります。もしその場で考えがまとまらない場合「○分後にこちらから電話します」と言って、考えをまとめてから発言します。

5)微妙なコメント取材の場合、記事内容を確認します
 マスメディアの発信するニュースにしても、扱いの大きさ・紙面の都合で文字数などは限られており、コメントはこの都合により整理した言葉の表現になりやすく、伝えようとしたニュアンスと大きく変わってしまう事があります。この事からコメントする際に十分注意を払い、間違われそうな微妙なコメントの場合は、記者にコメント記事が出来た際、電話で読み上げてもらうように依頼し、自分の考えにあった表現かを確認する事も必要です。




広報マニュアル:Crisis management(01

Sec.3 緊急時の広報対応



広報における危機管理


 近年はインターネットなどのパーソナルメディアの台頭により、個人の意見を発信できる環境が整って来ました。今までは企業内の不祥事を従業員が認知しても公表する手段がなかったのですが、ブログや掲示板と言った手段が出来た事で、従業員からの内部告発という形をとり、企業内の不祥事が公にされる事例が増えてきました。

 もちろん内部告発と言った不祥事が公にされる事の無いように、企業体質を健全な物にする必要がありますが、起こってしまった不始末の後始末如何で、企業が存続出来なくなった事例は、枚挙にいとまがありません。この後始末で各ステークホルダーと、どのようなコミュニケーションが取れるかが組織存続を左右します。ステークホルダーに育った不信感をいかに最小限に留められるか、ダメージの拡大を防ぐために広報という視点が必要です。




事故・災害が発生した場合


 企業の管理するもの全ては、自らが事故・災害を起こさないよう、日々業務を行っています。これを実行する事は、お客様や地域住民の方々への社会的責務であり、一度我々が原因となる事故・災害が発生した場合、地域住民の方々や社会に対し、多大な迷惑を掛ける事になります。

 不幸にして事故・災害が発生した場合、復旧作業を最優先で行なう事は当然ですが、忘れてならないのは、お客様や近隣住民の皆様への正しい情報の提供です。




不測の報道がされた場合


 「不測の事態」の報道は、企業の社会的信用に大きくかかわり、次の3つに大別されます。

1)役員の改選や、記者発表前の事項など、まだ公表する段階ではない情報について、取材が行われた場合。

2)社員の不祥事や、内部告発など予期しない情報が、ニュースとして報道されてしまった場合。

3)憶測が一人歩きし、事実に反した誤った情報が、ニュースとして報道されてしまった場合。


 この様な「不測の事態」は度々起こる事ではありませんが、情報管理やコンプライアンスと言ったコーポレートガバナンスが働いていないのではないかと憶測を呼び、広い範囲のステークホルダーに対し信頼を失う事になるので、細心の注意を払い、十分な対応が必要です。




広報マニュアル:Crisis management(02

1:広報における危機管理



1.企業における危機とは何か


最近マスメディアで取り上げられた企業の不祥事を上げてみると、食肉産地偽装、不良製品でけが人多数、投資詐欺、公共工事談合、粉飾決算、有価証券報告書虚偽記載・・・等々。消費者に嘘の情報開示をしてしまう事、安全や安心を脅かす製品を販売してしまう事、国民の利益を企業の利益に置き換えてしまう事、適正納税義務を全うしない事・・・など、企業を危機に陥れる不祥事を見ると、全てステークホルダーを裏切る事で、不祥事としてニュースになっています。

なぜこの様な不祥事が毎日のようにニュースになるのか、企業活動を長年続けていく内に出来上がった企業の常識が、社会常識と乖離してきたため「企業の常識は、社会の非常識」となったのが原因でしょう。企業と社会の価値観にズレが生じ、その情報があの企業は非常識だとニュースになり、企業イメージに悪影響を及ぼす。この企業イメージに悪影響を及ぼす事全てが「企業における危機」です。




2.リスクの傾向


1)初期対応ミスによるリスクの拡大
 本来ならば単純な作業工程上のミスだった物が、曖昧な返答で憶測を呼び、企業体質の不備まで言及され致命傷となり、社会から消えていった企業は数多くあります。初期対応を的確に行うためには、社外情報を積極的に集める事が必要です。
 「不測」な報道が流れる前には、何らかの情報の動きがあり、それを見ぬふりをして放置した事が、事態を悪化させてしまう原因です。各部署で何らかの動きを感じた時には、関連部署に連絡すると同時に、広報課にもご連絡ください。

2)ネットによる潜在リスクの顕在化
 インターネットが普及し、ブログや掲示板と言ったプライベートメディアが身近な物になる事で、企業のマイナス情報は隠すことが出来なくなりました。顧客の個人情報や企業機密に関しては、アクセス権をコントロールし管理する必要があります。
 特に社員にはプライベートでもパソコンにWinnyなどのファイル共有ソフトをインストールしないよう、徹底的な指導が必要です。一度情報が流出してしまうと情報はあっという間に広がり、会社の情報管理能力を問われることになります。

3)キャンペーン型報道によるリスクの長期化
 報道の初期段階の会見で、企業トップや広報担当者の余計な一言や、対応の悪さが新聞やテレビ報道で取り上げられ、継続して報道される事により、ダメージを深刻な物にしてしまいます。緊急時の広報対応で守らなければならないポイントは「正確な情報収集・状況の把握・徹底した事実確認」です。
 「ウチに限って」「何かの間違い」「業界では日常茶飯事、どこでもやっている」と言った、先入観・楽観や被害者意識を捨てる事からスタートしないといけません。




広報マニュアル:Crisis management(03

3.取材・記者会見に対する心構え


「企業における危機」が発生した場合、さまざまな報道機関からの取材攻勢に合います。こうした報道機関の取材に対する対応の仕方を考えてみます。


1)緊急記者会見の実施基準
 発生している事例について、報道機関2〜3社から取材依頼が届いている程度では、広報マニュアル:practical(06にあるよう個別に対応で済みますが、どの程度の事例から企業として記者会見を行うべきか、一般的な判断例からの基準を上げてみます。

a:社会的関心・影響が高い事故・事件・不祥事の場合
b:被害拡大を防ぐため、迅速な情報開示を必要とする場合
c:複数の主要報道機関から取材依頼、または記者会見の要望が出ている場合


 また、社会的影響が大きい企業であれば、積極的に記者会見を実施し、責任ある立場の者が正確で的確な情報を開示する事により、噂や誤った情報による風評を事前に防ぐ事が出来ます。


2)会見内容
 発生したトラブルが公になり、大あわてで会見を開いたは良いが、記者からの鋭い追求に、後ろ向きな答えで発言した一言が、マスメディアで大きく取り上げられ、会見した事でより大きなダメージを与えてしまった。などと言う例は枚挙にいとまがありません。
 緊急記者会見で一番おそれるべき点は、記者に誤解・曲解される事です。正確な情報がないまま、その場しのぎの憶測や推測で返答すると、記者にミスリードを許す事にもなります。
 言うべきことは1:何が起こったのか・2:なぜ起きたのか・3:これからどうするのか・4:この事態をどう思うのか・5:責任はどこにあるのか以上の項目によって整理された情報を、正確・簡潔・明快・分かりやすい、の四つの観点から選んだ言葉で話す事です。
 情報を判断する基準としては、記者の憶測を喚起しない迅速な意思決定と行動/疑惑を招かない徹底した情報開示/企業・業界常識の徹底排除社会的視点からの判断の三つ。発生した事例を社会の物差しで客観的に見る事が出来れば、自分も被害者の一人と言った発言もないでしょう。


3)再発防止策
 企業の危機管理が必要なほどのトラブルを起こした後、絶対に起こしてはならない事は当然ながら「事例の再発」です。危機的トラブルが起き、長い時間が過ぎて再発防止策を公表しても、逼迫した社会的影響が少なくなると、マスメディアでも報道される事も少なくなります。
 一度付いた「トラブルを起こした企業」のレッテルを剥がすためには、騒ぎが収まる前に再発防止のための原因究明と、それに沿った万全の再発防止策を社内で徹底させ、社会に公表しなければいけません。
 一言で原因究明と言っても、企業のこの様なトラブルでは直接的な原因と、働く現場の雰囲気と言った職場環境からの副次的、間接的原因の二つが見受けられます。この直接的・間接的原因に対して、それぞれに再発防止策・改善策を設ける必要があります。
 また作業工程の改善策などでは、積極的に外部の専門家など、第三者の目でチェックするシステムを取り入れ、再発防止策により信頼感を持たせる事が必要です。


4)危機管理マニュアルとシミュレーショントレーニング
 不祥事が公になり、マスメディアの報道に翻弄され、なすすべもなく嵐の収まるのを待つのではなく、現在の社内各部署毎に潜むリスク要因を拾い出し、未然防止策を策定し、社内体制や役務分担などの取り決めをあらかじめマニュアル化しておく必要があります。
 業務上のリスク対象と言っても広範囲にわたるため、あらかじめ「組織にとってのリスクは何か」「管理対象をどの範囲にするか」と言った社会的・法的責任範囲の意思統一が必要です。
 企業活動にPDCAサイクルがあり、その活動がどの程度の効果があるのか、社会認識を確認しながら成長していくように、作り上げた緊急時対応マニュアルも作り上げた事で安心するのではなく、そのリスクは本当にリスクなのか、他のところにリスクは潜んではいないのか。など、危機的トラブルが発生したとシミュレーショントレーニングを繰り返す事で、より精度の高いマニュアルになっていきます。

いざというときに使えないマニュアルより、使えるマニュアルに。




広報マニュアル:Crisis management(04

2:事故・災害が発生した場合



1.まずは広報課へ連絡を


 1:広報における危機管理の2.リスクの傾向/1)初期対応ミスによるリスクの拡大 にもあるように、初期対応の如何により、その後の報道機関との信頼感が大きく左右されます。この事から、事故・災害が発生した場合には、社外からの問い合わせなどに備え、状況や事実関係など、広報課へ速やかに連絡してください。
 社外から、特に報道機関から問い合わせが来た時に、企業の窓口である広報課が事態を把握出来ておらず、初期対応に不備があった場合「企業として緊急時の対応不備」や「裏に公表できない別の事実があるのでは」と、ダメな企業のレッテルや、信頼感の無さから来る詮索で、報道機関からは激しい取材を受け、記事になった時も批判的な記事になってしまいます。
 広報課は企業の対外的な窓口として存在します。ステークホルダーに対し何かしらのご迷惑を掛け、企業として社会的責任を取る義務があるとすれば、必ず広報課まで連絡してください。




2.窓口担当責任者(スポークスマン)の一本化


広報課では事故・災害のもたらす社会的影響を考え、全社的に対応できるよう関連部署と迅速に統一見解を出し、公表できるよう対外的な窓口であり、事故・災害の担当責任者(スポークスマン)を任命します。
 また不幸にも、社会的影響が大きな死傷者が出てしまった場合など、部門の責任者である担当役員が、現地もしくは関係記者クラブへ出向き、事態の状況や事実関係から、当社のなすべき事をはっきりと説明する事も必要と考えます。




3.正しい情報を積極的に公表する


 企業側に原因のない自然災害はもとより、企業側に非がある場合でも、事故・災害が発生した場合には、逃げ腰で対応するのではなく、報道機関を通じて出来る限り積極的に事実の経過を説明すると共に、事態が収束に向かった迅速さや、社員による活動を積極的にアピールし、事態に対する対応策を出来るだけ早く示す事で、受けるダメージを最小限に留める事が出来ます。
 テレビのワイドショーなどで見る報道機関と言うと「しつこい」「うるさい」などと、特に後ろめたい事実がある人にはそう写るのかもしれませんが、報道機関が知りたい事は社会が知りたい事、なのです。報道機関の影響力にも述べましたが、記者の後ろには多くの読者・視聴者がおり、その人達に正確な情報を早く提供するのが報道の使命であり、企業側にも公表する義務があります。




4.事実だけを公表する


全ての報道機関に対し公表する場合は、きちんと確認できた事実だけ話す事です。未確認情報や予測・希望的観測などの話しを交えてはいけません。未確認な部分を含め、どうしても公表する必要がある場合「現在確認されている事は○○で、それ以上は確認されていません」などと答える事です。




広報マニュアル:Crisis management(05

5.社員に状況・事実関係の周知徹底を


 全社員に状況と・事実関係、会社としての対策方針を素早く、正しく伝える事で、企業として一貫した姿勢を確立できます。つまり社員一人ひとりが広報担当者となり、お客様や取引先と言ったステークホルダーの方達と接し、情報を伝える事で適切な情報管理にも繋がります。
 それを怠ると誇張された情報や噂ばかりが社員に広まり、不安や動揺を招く事になります。そして社員と接触するお客様や取引先と言ったステークホルダーを始め、現地に取材に来た報道機関の記者達が、当事者である企業の社員が状況・事実関係を理解していないと受け取られ、報道される事で社会の不安と怒りを買う事に繋がります。




6.報道機関には定期的な報告を


 社会的影響が大きな事故・災害の場合、報道機関の取材スケジュールとは関係なく、スポークスマンまたは広報担当者が事後経過を定期的に経過リポートとしてまとめ、報道機関へ報告します。未曾有の災害だった阪神淡路大震災では、毎日決まった時間に、例え発表事項が無くても定例会見を行い、質疑応答と言う形で情報提供する事で、情報管理を徹底できたという事例があります。




7.情報提供は原稿締切時間を考慮する


 報道機関への情報提供は、出来る限りそのメディアの原稿締切時間、新聞だと翌日の朝刊に間に合わせるため、午後6時くらいまでに、またテレビだと夕方のニュースに間に合うよう午後4時くらいまでにと、締切時間を考慮して行わなければなりません。




8.情報の流れは一本化する


 事故・災害の祭には、事故連絡規定に準じ速やかに報告しますが、社会的影響が大きいと判断されると、災害対策本部や事故対策本部が設置され、事故・災害の処理に当たります。その場合 ●対策本部 > ●広報課 > ●報道機関 と言うように、報道機関への情報提供は情報の交錯・誤報を防ぐために、広報課から一本化して提供する事になります。




広報マニュアル:Crisis management(06

3:不測報道が流れた場合



1.報道機関からの問い合わせへの心構え


 報道機関から取材依頼の連絡があっても、広報マニュアル:practical(06にあるよう、通常のニュースへの取材か、不測報道についてかは判断できません。取材意図を伺い公表段階に至っていない、または不祥事などの予期しない情報であった場合、例え事実関係を知っていたとしても「事実関係を確認し、追って広報課から返事いたします」と返事を保留し、広報課へ連絡してください。
 広報課では問い合わせ内容により担当部署、事例によってはトップとも相談し、内容を十分検討した上で広報課から報道機関へ返事する事になります。報道機関から取材依頼の連絡があった場合、自分の口で語っても良い物かどうかの判断に迷った場合、返事を保留し広報課へご連絡ください。対報道機関へはくれぐれも慎重な対応をお願いします。




2.情報収集を的確に


 万が一不測報道された場合、関係部署と密接に連絡を取りながら、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)の法則に則りながら、事態の持つ重要性や社会的影響などを判断するために、情報収集が必要になります。
 この情報を社会情勢や空気感、倫理観などで分析・検討した情報を、関連する部署で共有しファイリングできるシステムを構築する必要があります。こうする事によって情報を待つだけではなく、必要な情報は何かという危機感覚が身につきます。不測報道された場合の情報不足は、企業の危機を拡大させる事を忘れてはいけません。




3.社内の連絡を密に


 広報課、または関係者が、外部からの問い合わせに的確に対応するために、問題の実態や、報道機関の動向を関連部署で情報を共有し、情報ギャップを埋める事が大切です。
 また、翌日にマスメディアでニュースとして報道される可能性がある場合、経営側役員、または責任者である管理職に取材の可能性がある場合、翌日に抗議や陳情が予想される場合など、企業責任を追及される可能性がある大きな事件が起こった場合は、重要な会議中だろうが、深夜就寝中だろうが、経営トップに報告しなければなりません。
 報告した結果が例え無駄骨に終わったとしても、最悪の事態を想定して準備をする必要があります。




4.報道機関に前向きに


 報道機関に対して慎重な対応をすると言う事は、報告を遅らせると言った事や、追求が怖くて消極的な対応をすると言った事ではありません。もし報道機関に対し、非協力的で後ろ向きな姿勢で対応すれば、当社に対し不信感を募らせ、追及は更に厳しい物になるでしょう。
 また、事実確認前に憶測で話した事が、結果的に嘘となりそれが発覚した場合、報道機関を始め社会から信頼を失うだけでなく、問題をさらにこじらせ、企業により大きな危機を招く結果となります。




5.事後の施策を早く具体的に


 不測報道された場合、報道機関・社会が事実の次に求めることは、事態解決のための具体策ですが、広報マニュアル:Crisis management(03 の3)再発防止策にあるように、直接的・間接的原因に対して、それぞれに再発防止策・改善策を設け、早い時期に公表する必要があります。
 不測報道され、社会が当社の動向を注目している時に、事後の施策を報道してくれた方が、我が社のPRとして公表するよりも、社会に好意的に受け止められます。




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