RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

写真の撮り方-01

beach_480

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 私の職業はアートディレクターです。職業としての段階としてはアシスタントデザイナーからデザイナーと来ておりまして、はるか昔には学生だった頃もありました。その学校には随分とキチンと作られた写真スタジオもあり、カメラも4×5サイズのフィルムカメラを使い撮影実習もしていました。

 1970年代前半の事でストロボよりもタングステンを使っていましたが、スタジオでも物撮影の、キチンとしたライティングを作るのがどうも肌に合わず、カメラマンよりもデザイナーを目指した訳なのですが、カメラは嫌いではなく、スナップ程度に色々な写真を、ストロボなどの補助光を使わずに撮影を楽しんでいました。

 仕事柄写真を使う事も多かったので、ある一定以上のクォリティーとはどのような写真なのか、まぁ、教わるより慣れろでしょうか、身についていたわけです。そんな事を知ってかどうか、このAll Aboutの集まりがあった時に、営業のOさんが「一眼レフを使った写真の撮り方のコラムを書いてくださいよ」と言われ、被写体にレンズを向けシャッター切ればほら撮れた。と言ったら違うと言う。

 少しでもキレイな、雑誌や広告で見るような写真の撮り方が知りたいとの事で、あくまで自己流ですがいくつかのポイントでコラムを構成してみます。


■人間性
 最低限今よりもキレイに撮りたい、と言う欲望が頭に渦巻いていないとダメです。「こんなもんだろー」とか「めんどくさいから」「見たいテレビがあるから」などと言っていてはまず無理です。まぁこれはデザイナーを目指す人にも言えると思いますが、自分の目指す物に向かってどん欲さが無いと、仕上がりはあまり期待できない物が多いです。


■カメラ
 一応オートだけではなく、絞りやシャッタースピードをマニュアルで使える一眼レフカメラを念頭に置いています。撮影した画像ファイルも.jpgだけではなく、後処理の事を考え.CRW(カメラRAW)で撮影できる機種だと、よりイイと思います。レンズは倍率の高いズームも最初のウチは画角が変わって面白く見えますが、一年くらいで多分飽きちゃいますので、固定焦点でも良いのでなるべく明るいレンズを選びます。

良い写真って「風景の中でどのようにフレーミングして切り取るか」ですから、35mmカメラ換算で広角35mm〜80mmくらいのズームレンズあたりから始めるのも良いかもしれません。この画角のレンズって安いコンパクトカメラのズームが、これと同じくらいの画角のレンズを使っています。


少しだけ写真の説明を。左はまだ人の歩いていない白い砂浜の犬の足跡、これもオートで撮影するとアンダーに撮れてしまいます。右は雨のリゾート、人もいなくて寂しい風景で、椅子だけがじっと佇んでいるのが存在感ありました。

最初はこんな感じでしょうか、次も続きますよ。




写真の撮り方-02

coffee cup_480

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 ちなみに皆さんは、どんな写真を“良い写真”と判断しているのでしょうか、それによっても撮り方が違ってきますので、自分が好きな写真、気に入った写真をよく観察する事から始まります。多分その写真は、漫然と街の風景を撮った物と、ひと味もふた味も違うと思います。目を引きつけられるポイントが明確にあり、何かしらのメッセージが感じられると思います。




■レンズ

 昨日のカメラの後にも書きましたが、もう少し詳しくと思い独立した項目で説明します。昨日の「35mmカメラ換算で広角35mm〜80mmくらいのズームレンズあたりから始めるのも良いかもしれません。」に追加で、マクロレンズもプラス一本有るとパーフェクトです。

 私はカメラを持ってプラッと出かけ、手持ちでの撮影が多いので、レンズは極力明るいレンズを選んでいます。ピントの合う範囲を“被写界深度”と言いますが、広角は広く、望遠は狭い、距離が近いと狭く、無限大に離れるほど広くなります。また、絞りを絞り込めば広くなりますし、開放では狭くなる関係でもあります。

 サンプルで付けた下の写真を見ていただいても分かると思いますが、暗い室内に三脚立て、絞りは開放、シャッタースピードは1/8位でしょうか。寄りで撮っていますのでピントが来ているのは一箇所くらいで、後はみんなぼけてしまいます。こんな物に寄った写真だと、自宅にある普段見慣れている物でも、光の加減でとてもキレイに撮る事が出来ます。

 レンズの事を書いたので、補足として少しフィルターも説明しましょうか。写真が画像データーになる前まで、広告に使われる商業写真などはリバーサルフィルム(スライド用フィルム)を使っていました。このフィルムは普段使っていたプリント用フィルムと比べても色温度に敏感で、太陽や蛍光灯、ストロボや白熱灯など、同じ物を撮影しても光源によって、色のついたビニールを掛けたように色が変わった物でした。

 人間も物理的に入る情報がそうなっているのですが、脳が色を修正して判断しているので、光源での差はあまり感じられません。現在使われているほとんどのデジカメは、自動でホワイトバランスを取りますので、フィルム撮影に使うような色変換フィルターは必要なくなりましたが、キャンディーなどを包んでいたビニールの包装紙を、レンズの半分だけ隠してみるとか、クシャクシャにして別な方向から光を当てて、乱反射の光をレンズで拾ってみるとか、人工的に不自然な光を演出する事でも表現を膨らませる事が出来ます。




写真の撮り方-03

Jetty_480

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■時間とお天気

 昨日の屋内での撮影でしたら、時間やお天気など気にせず撮影できますが、風景や屋外で物を撮影する場合、ドラマチックに撮影できる時間帯が有ります。日の出・日の入り前後がその時間帯ですが、光源となる太陽の位置が水平に近いので、陰影がはっきりと出て立体的に見えます。また望遠レンズで空気感を感じさせるよう撮影する場合は、季節や雨が降った時など天気によってだいぶ違いますが、朝は空気中の埃が少ないクリアな感じに、逆に夕方は活動後の濃密な感じの空気感を得る事が出来ます。

 お天気は晴れでも良いのですが、薄曇りの時などは全体にベールを掛けたような、間接的な光のまわり方で、ほとんどの物がキレイに見えます。特に女性を撮る時などは、肌がキレイに見えますのでお奨めです。また、雨が降って頭に思い浮かべた絵柄を再現できなくとも、雨の日だから撮れる画像というのもあります。特に物を撮る場合、濡れて水滴の付いた表情は、とても印象的だったりします。

 少しだけ写真の説明を。リゾートでの日没後の桟橋です、雲が芸を披露してくれ良い感じに。この時はディライトタイプのフィルムをタングステンタイプに変換するフィルターを使っていますが、デジタルカメラで撮影フォーマットをカメラRAWで撮影した場合、PCで現像の際、撮影時のホワイトバランスをいじれます。もう一枚はレストランのテラスで、夕日が直接グラスを彩り、煌めきとコントラストが良い具合に。




写真の撮り方-04

MOTO GUZZI LeMans1000_480

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■フレーミング
 クルマやオートバイなど、大きな被写体は全体を画面にきっちり納める表現もありますが、一部を切り取る形での表現方法も考えられます。どこをどう切り取れば、格好良くなるかは背景と商品の色などに左右されますので、撮る方のセンスに大きく左右されるところでしょう。また、クルマのボディーなど面が大きい物では、そこに写り混む風景なども、画像の一つの要素となります。


■露出
 デジカメのカメラRAWデーターでは、PCでの現像の際、露出を絞りで言って一段開けたり、絞ったりしても、仕上がりの画像にさほど影響が無く調整できますが、露光をAUTOの設定で撮影の場合、背景の色や被写体の形状、光の当たり方で仕上がりが明るく跳んでしまったり、暗く潰れてしまったりします。

 カメラを覗いたフレームの中で、ハイライトとシャドウを認識し、被写体の中で一番表現したい部分に露出を合わせるよう意識して露出を合わせないと、カメラで適正露出と判断していても、思った画像が撮れない場合もありますのでご注意ください。

 カメラ量販店にも軽い布製で片面はアルミ蒸着、片面は白と言ったコンパクトに収納できるレフ板を売っています。被写体で表現したい部分がシャドウで暗くなっている場合、レフ板で光を当てる事で、自然な形で明るくできますので、一つ用意しておくと何かと便利です。


■まとめ
 デジタル一眼レフカメラを使って、少し良い写真の撮り方を4回に分け説明しましたが、カメラのファインダーを覗いた時に、こんなフレーミングがあったな、こんな撮り方があったな、などと、広告や写真集などで良い写真を沢山見る事はとても大切な事です。また、良い写真を撮るために早起きするなど労力を惜しまず、色々な撮り方にチャレンジし、沢山の写真を撮って頭に引き出しを作っておく事も忘れないでください。


 少しだけ写真の説明を。左は晩秋と言っていい時期、東京都内の公園の入口で撮影した写真です。遠くまで行かなくとも近くとも良い場所は沢山あります。右は、春先に山梨のリゾートで撮ったクラッシックカーで、リアフェンダーの曲線が官能的な線を描き、そこに写り混んでいる風景もなかなかキレイです。




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