RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

顧客の嗜好変化?

農耕民族である日本民族は、地域で暮らすもの同士、何かあったら助け合うと言った村社会が基本にあり、欧米型の契約社会はなかなか受け入れられずにいました。

しかしこのインターネットでのコミュニケーションは、人と直接会って顔を見ながら言葉で、その場の雰囲気を含めた気持ちを伝えるのではなく、写真や文章で気持ちを伝え、内容を判断する、比較的契約社会に近いコミュニケーションです。

そんなコミュニケーションに慣れたユーザーに対し、物を売っていくためのマーケティングは、今までと違った切り口でユーザー意識を調査しないと、正確な判断が出来なくなります。

ただしネットのヘビーユーザーであろう「ネラー」と呼ばれる人たちは、自分達は匿名の中から発言していますので、コミュニケーションしているとは言えません。契約社会へ移行したとまだまだ言い切れませんが、これからの流れは少しずつ個人単位の契約社会へ移行していくと思われます。

私たちが子供の頃、見たいテレビ番組は毎週決まった曜日の決まった時間に、テレビの前に座っていないと見る事が出来ませんでした。

ウチの子供たちもそうですが、テレビで放映される番組は見ています、しかし見たいコンテンツは、自分の小遣いでレンタルビデオを借りたり、YouTubeで見たりと、天から降ってくるのを待たずに、自分の手で取りに行く事を知っています。

この様な環境で育つ今の子供たちには、莫大な金額で媒体を購入し流すCMと言った物は、どの程度伝わるのでしょうか。Web上にあるバナー広告などは、商店街の看板みたいな物で、歩いている分にはそれ以上のメッセージは伝えては来ません、興味有る物だけ扉を押せばいいのです。

これから先テレビコマーシャルはどう変化していくのでしょう、CMをスポットで流すよりも、今でもありますがドラマなど商品を劇中に登場させ、好感度を上げるといったタイアップ広告が中心になっていくのかも知れません。

欲しいコンテンツをスポンサー抜きに見て育つ世代に、「小さい頃テレビで見た思い出のCM」みたいな文化は今後残っていくのでしょうか?。

答えは一つではないでしょうが、顧客の嗜好に変化が出てくるのは、社会環境が変化し、個人の意識を変えるからと考えて差し支えないでしょう。

社会環境の変化、わかりにくく説明できない物事がある時は、便利に使われる言葉です。しかし新しい技術の出現で環境は大きく変化します、最近のHD-DVDとブルーレイディスクではその変化を目の当たりにされたと思います。

しかしこれはディスクメディアの規格の違いだけで、ユーザーがメディアを通して楽しむであろう機能については考えられていません。

映像やゲームなど、大容量情報をやり取りしたエンターテインメントとして考えると、ブロードバンドを基にしたネット環境・法整備がすすめば、メディア規格の違いで勝った負けたは判断できないでしょう。

自分の立っている足許を見つめ、何を提供できるか、何が社会から歓迎されるか、マクロ的な視点で広告表現の切り口を考えてゆく事が大切と考えます。




最近の仕事傾向

グラフィックデザインが私の本業と考えています。今までは広告代理店などが、クライアントさまからのオーダーで、商品広告やカタログ、会社案内や事業案内など、物や事を告知PRするためのグラフィックツールを「美しく」「高級に」「親しみやすく」などと言ったコンセプト・キーワードで差別化し、制作してきました。

今でもこの様な形で依頼され、制作するのが主流で、グラフィックデザイナーとしての職域でもあるのでしょうが、最近はその様なグラフィックデザインとは違うカテゴリーの、設計事務所や商業ディベロッパーと言った、今までと違った業種からの仕事が増えてきています。

マーケッターの作る数字データーを元に、仮想ターゲットユーザー設定、マーチャンダイジングなど、それぞれの職域を離れ、社会を俯瞰で捉え、ターゲットユーザーへのプレゼンテーションを行う。イラストレーターやカメラマン、コピーライターと言った今まで仕事で付き合う人たちよりも、制作という職域を飛び越え、色々な可能性を模索する人たちとの仕事は、新しい発見の連続です。

同じように商品開発や広報の仕事もそうかもしれません。PRやIR活動も印刷に拘らず、特にWebの領域では色々な新しいサービスなどを通して、アイデア次第でPR出来る領域が増えています。今までの職域を離れた、別の視点・切り口で商品を捉えると、別の新しい売り方が見えてくるかもしれません。

今まではその専門分野にスキルに長けた人たちが、その培われてきた専門分野を牽引し、職域と言った村を構成してきましたが、パソコンによって起きたスキルのコモディタイズが、今までホワイトカラーと呼ばれていた知識労働者達を「スキルワーカー」と「ナレッジワーカー」の二種類に分けてしまった気がします。

仕事には全て「目的」があります。今まではその目的を達成する為の「手段」が、専門の職域・プロフェッショナルと言った人たちにしか出来なかった高いハードルを、コンピューターが低いものにしてくれました。企画を考える者は、今まで以上に手段を選ぶ柔軟な考え方と、新しい手段を正しく評価できる眼が必要でしょう。




大丈夫か、日本ブランド?

あの頃は良かった。


私自身、生まれも育ちも横浜です。ウォークマンと時を同じく生まれた、雑誌 Popeye 世代でもあり、物欲な人間でもありました。新しい製品に声を上げ感激する物もあれば、中には、なぜにこんな物までと、驚くような製品もありましたが、その中でもダントツ一位は、車のドアミラーにワイパーが付いていた事。
・・・サイドウィンドウ(昔の三角窓があった辺り)にミラー用ワイパーが付いたのもあったような?

30 代に入り仕事である広告のコンセプトから、ビジュアル構成など企画の世界で生きてきたからか、製品の見方にも自分なりの価値観で判断できるようになってくると、これがもういけません。まぁ、時代的にはラジオとカセットくっつけステレオにすれば、今まで家具みたいな据え置き型か、コンポと言ったステレオでしか楽しめなかった物を、家中どこでも、屋外でも手軽に楽しめるステレオに。なんて、1+1=3みたいな付加価値の付け方で、ドンドン新しい製品が出てきた時代でもありました。

元々製品という物には、道具としての機能が備わっていますが、多機能を一つの製品で実現するために、耐久性が落ちたり、道具として扱いにくくなったりと、弊害も見えてきます。それに比べ、外国製品は無骨で、一つの機能に拘り、丈夫で長持ちと言う印象が、特に家電製品で感じられ、ブラウンやフィリップスと言ったブランドのファンでもありました。

そんなへそ曲がりというか、天の邪鬼というか、自分で使う製品を選ぶ基準には、使用環境で一番本質的機能を持った製品を選んでいます。その中で困っているのは携帯電話。

中途半端な機能を寄せ集めた製品を何種類も作っても、欲しい機種はなく、使いたいメールの機能さえ小さなボタンでチマチマやるので、イライラするばかり。ここで改めて日本のメーカーが考え、作る製品を見ると、ほとんどが足し算の考え方。

クルマなんかも同じように、長距離走ったとしても片道200km、家族6人全員が乗れて、街中走行中心のコンパクトカーを捜した時、ほとんどの国産車のコンソールには、いかにも取って付けたようなプラスチックのメクラ蓋が「本来僕はここには付かないから」と、暗にディーラーでNAVI取り付けてね、と自己主張している物ばかり。

欲しくもないものを購入したくないので、若干割高でもヨーロッパのコンパクトカーになりましたが、日本メーカーの製品は、ユーザーの使い勝手よりも、メーカーの都合優先な気がしてなりません。

携帯電話に話を戻しますと、カメラ > 撮影する物の約60%くらいは室内で、携帯の小さな暗いレンズのカメラでは光量が不足し、まともに撮れないのでいらない。ワンセグ > 家でもほとんどテレビは見ない、ましてや移動中に見る物もないからいらない。音楽プレーヤー > 通信速度の遅い携帯の通信環境では×、容量の重い音楽データーをDLするのはPCで、だからいらない。

正直言って自分が携帯に求めるのは、通話と緊急時のメール位。でもちょっと待って、iPhoneが7月に発売される、iPod携帯と言われた奴だけど、 iPodは持ってるからと思ったら、MobileMeと言うサービスが新しく始まるようだ。デスクトップのPCと携帯端末であるiPhoneをリンクさせ、メールやカレンダー情報を一元化し、PCのデーターを持ち歩かずに、アクセスすればどこにいても利用できる。

現在PCでは仕事上のメールはほとんどgoogleのGmailで行っています、事務所と自宅でメールを一元化できるから。メールサーバー容量が5GB有るので、添付書類もそのまま削除せずに残しておけ、Netに接続できるPCからアクセスし、メールに添付した画像やpdfファイルなど、DLしていつでも使えるから重宝している。

このサービスが、携帯のiPhoneでも使えるとなると、複合化した携帯も意味が違ってくる。現在のiPod(もちろんiPhoneも)はビデオも再生できるので、プレゼン用のビデオ映像をクライアントに合わせDLし、説明する事も可能。スケジュール管理も簡単に携帯端末で入力しておき、事務所や自宅できちんと整理して書き込んでおける。

とは言えスマートフォンとどこが違うのか、携帯での通信料はまだまだ高額なので、もう少し利用者も増え、料金設定も下がってくれるとありがたい。





結論


足し算思考、機能だけの複合機は製品の本質が薄まるだけなので、私は欲しいとは思わないが、新しいサービスを含めた複合機は、新しいビジネスの可能性も出てくるので、がぜん欲しくなる。上に書いた携帯電話という一つの電器製品だが、複合機能をカメラやテレビと言った同じ製品の中だけで、つなぎ合わせている製品作りは、そろそろ限界なのではないか。

ユーザーの使い勝手を新しいサービスと合体させる、という形で複合機能を持たせるという考え方は、日本メーカーは今まであまりしてこなかったようだ。ハードとサービスの足し算思考は、これからの物づくりには一番必要になって来るのではないだろうか。




コモディティ化の恩恵

新技術が開発され、その技術を使った商品がユーザーにとって価値を認められ、商売が始まる。その内にその技術が普遍的技術となり、沢山のユーザーに行き渡る。コモディタイズの流れはこの様な物で説明される事も多いのですが、今まではProユースで価格も高く、手を出せずにいた分野も、ずいぶんと手に入れやすくなってきましたので紹介します。

デジカメを使われている方は多いと思いますが、最近ソニーから「デジタルフォトフレーム」という商品が発売されました。左右約18cmのコンパクトサイズ、値段も29,800円と比較的リーズナブルな金額です。

pop_1.jpg

店舗などで直接お客様と接する業態では、店内でのインフォメーションなどは、POPを使われていると思います。しかし市場やセールの時のように、活気のある勢いを表現するには良いのですが、短冊をペタペタと店内に貼るのはあまり格好がよろしくありません。

スマートにお客様に告知するのに、新しく発売された「デジタルフォトフレーム」が役に立つと思います。デジカメで撮影した画像を、パワーポイントなどで文字やイラストと組み合わせ、告知したい組写真を作り、この「デジタルフォトフレーム」で再生させます。

再生もスライドショー機能で、画面入れ替えの時のエフェクトなど選べますので、時と気分で変えてみるのも面白いでしょう。インフォメーションばかりではなく、新商品の告知や、店内で紹介しきれない商品など、いろいろと組み合わせてみるのも良いかもしれません。大きさから言っても、レジの横あたりに置いておくのに丁度良い大きさ。

パソコンとデジカメに画像編集できるソフトさえあれば、誰にでも出来ます。ネットワークにも対応していますので、飲食店などでは、各テーブルなどに置いてみても面白いかも知れません。

Adobe から販売されていますFlashと言うソフトを使えば、アニメーションでより詳しい説明も可能です。あっ、Movieになると「デジタルフォトフレーム」では再生できませんので、iPod+TVがお勧めです。今までMovieの再生にはVHSやDVDプレーヤーが必要ですが、iPod nano 4GBで17,800円で、AppleCareに加入すれば、2年保証になりますから業務用で使っても非常にお得です。「デジタルフォトフレーム」と同じように画像をスライドショーが可能ですから、画像も映像もと言われる方にはこちらがお勧めです。

後はレイアウトなどのコンテンツを充実させるのに、Adobe IllustraterやPhotoshopなどアプリケーションと、文字書体を充実させれば表現方法も広がるでしょう。

技術革新・量産効果が高価な機器をコモディタイズし、誰でも購入しやすい価格で市場に供給されます。今まで高価で手段として候補から外されたモノでも、機能という視点で機器を見直すと、民生用の安価な機器でもPro用機器と同じような機能を有する物も出てきます。固定概念を外し、俯瞰した視点で見直すと、いろいろな可能性が見えてきますね。

自分一人で考えても出ないアイデアも、複数の人の雑談からヒントをえることもあります。そのヒントが使えるアイデアと、手段に繋げられる柔軟な考え方も必要と思います。






企業繁栄の極意?

  • -
  • by virbius
  • 2008/08/27 Wed 11:42

『老舗の極意』とは


昨日の朝日新聞夕刊の時事コラム欄『窓』に掲載されていた『老舗の極意』ですが、一部引用させていただくと、


 老舗と呼ばれる長寿企業は、経営の指針としてどんなことを考えているのだろうか。漢字1字でたずねたら、「信」という答えが最も多かった。「信」と答えたのは回答全体の24%。以下、誠、継、心、真、和、変、新、忍、質という順になった。
 一方、「社風を1字で表すと?」という問いでは、「和」が最多で19%だった。以下、信、誠、真、心、進、明、堅、温、笑の順。
 企業が長生きして老舗になるには、顧客、取引先、従業員、株主などさまざまな関係者の利害が長期的に釣り合うような道を歩んでいかなければならない。信も和も、利害関係者の心の調和を示す言葉なのは偶然ではあるまい。


これはまさにCSR(企業の社会的責任)の考え方であり、老舗と言われる長寿企業が守り、実践した社訓でもあります。しかしこの考え方はISOや、欧米から輸入された考え方ばかりではなく、江戸時代から続き、財閥と呼ばれた三井家や住友家、商売上手と言われていた近江商人の家訓として残っており、調和を尊ぶ日本人として経験的に実践されていたと考えても良いでしょう。



三井家家訓(宗竺遺書)


「多くをむさぼると紛糾のもととなる」
「不心得の一族は協議し、処分せよ」



住友家家訓


「職務に由り自己の利益を図るべからず」
「名誉を害し、信用を傷つくるの挙動あるべからず」
「廉恥を重んじ、貪汚の所為あるべからず」
「我営業は信用を重じ、確実を旨とし、以て一家の鞏固隆盛を期す」



近江商人の家訓


「三方よし」「売り手よし、買い手よし、世間よし」





老舗の極意 = 繁栄の極意


この様に永続的な発展を目指した『老舗』として守るべき家訓ですが、情報量が限られた時代ならまだしも、Webと言うインフラが整備され、情報の質・量・スピードの全てがリミッターを外され、回り始めた現在では、企業の社会的責任というバックボーンが、ステークホルダーから見えていないと、商品広告にお金をつぎ込んでも、効率よく売上に繋がらなくなってきています。

企業が行うPR活動・IR活動とCSRは同義語ではありません。一部では頭に『環境』の言葉を付け、定義していますが、一企業市民として「持続可能な未来を、社会の要請を課題として、どのように考え築いていくか」を観点に活動してゆく事です。しかし一言に社会と言っても範囲は広く、お客様を筆頭に株主や従業員とその家族、取引先や企業活動している地域社会と言った、全ステークホルダーを対象にと言い換えた方が分かりやすいかもしれません。

社会的に何か一つ大きな災害や事故などが起きると、社会の求めるものも変化してきます。粉飾決算や産地偽装などが社会問題になると、財務状況や経営の透明性が問題になるでしょうが、先日の殺傷事件後は人権や雇用問題が台頭してきます。当然社会的要求をクリアするためには、コスト上昇も受け入れなければならない事もあるでしょう。しかし企業規模拡大を急いだライブドアは、今月13日の裁判で機関投資家に95億円の賠償を求める判決が出たばかりです。

太く短い生活は楽しいかもしれませんが、細く長い生活は充実しているかもしれませんよ。




夢を見られなくなったのか

小さい頃から


私がまだ小学生だった1960年代後半、万博などで世界に技術力をアピールし、先進国の仲間入りするんだ。と言うような、国が一丸となってのモチベーションが有ったように感じられます。当時一番読んでいたのは少年マガジンや冒険王と言った漫画雑誌や、学研の科学と学習というような、教育的内容の雑誌でした。当時の雑誌で企画された特集ページなどには、21世紀は空飛ぶ自動車や透明なチューブの中を走る列車、宇宙ステーションなど、科学技術が人を豊にし、未来は薔薇色だと鼓舞した特集が沢山ありました。

そんな自分の未来を信じ、豊かな社会生活が待っていると夢を見て社会で働き始め、自分の手で収入を得るようになると、もらったお給料のいくらかは貯蓄に。などはどこ吹く風で、クルマや洋服、旅行などにドンドンと消費されて行き、広告キャンペーンに於いても、ターゲットユーザーはその若い、湯水のようにお金を使う年代に向け発信されていました。




現在20代の人たちが育った環境は


何でもイケイケの80年代後半、バブル期に生まれた子供たちが、二十歳を迎えるようになってきます。90年代前半のバブル崩壊と共に苦労する親の背中を見、破綻する大企業をニュースで見、崩壊した社会保障で自分たちの負担する額に驚愕し、長生きしても報われる事の少ない社会制度を目の当たりにすると、この国に暮らす自分の将来の夢を描けず、自己防衛として守りに入るのは無理も無いのかもしれませんが、少し寂しい気もします。

だいぶ以前からバイクが売れない、バイク雑誌の発行部数も減ってきている、原因は若者の嗜好の多様化と言われてきましたが、それと同じように今クルマが売れていません。売れているのはミニバンやワンボックスタイプのクルマばかりで、昔若者の必需品・デートカーなどと言われたハードトップやクーペ、スポーツカーなど、運転やドレスアップなどでクルマを趣味として楽しむ人たちが減ってきています。

休日の過ごし方もそうです、近場の観光地や繁華街などに足を伸ばす事はあまりせず、自宅に籠もりDVD鑑賞や部屋の掃除をし、食事も外食をせずに自炊して慎ましく暮らす若者が増えているそうです。もちろん少し郊外に目を向ければ、移動の必需品としてクルマが利用されているように、地域での差はあるのでしょうが。




若者層は美味しくなくなったのか


ターゲットユーザー層として美味しくなくなったのかと言えば、そんな事はなく、やはり全体を牽引する層である事に変わりはないと言えますが、ただ流行っているから、雑誌で紹介され面白そうだからなどと新商品に喰い付くユーザーが減少し、今の自分に必要かどうかを吟味し、購入するユーザーが増える傾向にあると言ったところでしょうか。

ユーザー層のこの様な変化から、広告などの表現方法も変化に合わせたシフトが必要になります。またこの世代の従業員を募集する際も、仕事のやり甲斐と賃金だけのインセンティブだけでは、人が集まりにくい傾向にあると考えられます。

この若者事情は首都圏や大都市圏で顕著に表れてきていますが、これからも社会に変化がない限り、この様な考え方を持った若者達が増えてくる事で、一つのユーザー層として台頭してくるでしょう。




広報マニュアル:knowledge(01

Sec.1広報という仕事


私たち企業を取り巻く社会の動きや事業環境は、この数年でグローバル化やコモディティー化により急激に変化し、多様化・複雑化しています。'94年に成立した製造物責任(PL)法、'00年の消費者契約法など民事や裁判のルールが整備され、CSR(企業の社会的責任)や人権意識・市民意識の高まりなどから、消費者や報道機関をはじめとする社会の目は、以前とは比較にならないほど厳しくなっており、企業の展開している事業ばかりではなく、その企業体質をも判断する基準としています。

こうした状況の中、企業がその存在を社会に受け入れてもらい、活力ある未来を造り出していくためには、社会とのコミュニケーションの重要度が増大しています。この企業と社会とのコミュニケーションの基本にあるのが広報活動です。企業にとってこの先、発展・躍進していくためには、従来にも増して地域社会ばかりではなく、社会全般の理解と協力を獲得し、ファンを増やしていく事が必要不可欠であり、企業の顔として広報活動の重要性がますます増していると言えるでしょう。

では、具体的にどう考えるべきなのか。私たちの提供するサービスを利用していただくお客様、社会とのコミュニケーシニョンを説明するには難しい言葉はいりません。私たちのこの企業を、一個人・企業市民として捉え、隣人とのコミュニケーションを上手にとり、どうしたら長い間仲良く暮らしていけるかと考えれば、おのずと答えは導き出されてきます。一時期盛んに会社のロゴマークやCI(Corporate identity)といった言葉があふれていましたが、社会から見た我々の企業がどのように見られているか、どのような性格の市民として社会にあるべきかを、時間とお金をかけて企業ブランドを策定したものでした。

"buy meとlove me"広告と広報の違いを端的に表す言葉として有名な言葉ですが、広告は「私を買って」。広報は「私を愛して」。わかりやすいですね、この事から広報という仕事の内容が見えてきます。まず自分をもっと知ってもらうこと。知ってもらった上で再度「love me?」これで no! だとへこみますよね、でもこちらも相手(社会)を愛し、また愛してもらえるように自己を変革していき、社会からも愛してもらう。広報という仕事はこれの繰り返しです。

広報活動の基本は企業と社会の「コミュニケーション」であり、情報の発信ばかりではなく収集を行い、それを経営方針や営業活動に生かす活動です。社員一人ひとりが広報活動を理解し、自分自身も企業の一つの顔であるという自覚を持って日常業務を行い、日頃からお客様・地域社会のニーズに耳を傾ける事が必要です。




広報マニュアル:knowledge(02

1:広報活動の基礎知識


1.企業も一社会市民です


1970年代前半頃までだったでしょうか、企業の作り出す製品・サービスに於いて、社会に対してそれほど大きな影響を与える物は有りませんでした。70年後半にはいると雑誌と言ったサブカルチャーが大きな発言を持ち、その波に乗った企業の製品・サービスなどが、社会現象とも言えるほど、企業が社会に対し影響力を持つようになり、商品と向き合っていたユーザーが、商品の背景にある企業というブランドと、向き合うようになったのもこの頃からでしょう。

この様な事から顧客であるユーザーが、向き合う企業を正確に理解し、良い企業と判断してもらうために、正確な企業情報を伝えるため「社会に対し隠し事のない、透明性の高い企業」「コンプライアンス遵守の高い企業」であることが必要とされるようになってきました。

つまり「良い商品・サービスを提供する企業」だけではなく「ユーザーや社会に対し信頼性がある企業」と言った企業体質までをも、購入する際に判断基準としているのです。この企業の信頼感は、ただ黙って仕事をし、製品を作り、販売していくだけではなかなか認めてもらえる物ではなく、企業側から積極的に知ってもらえるよう働きかけ、「良い企業」「良い隣人」として認知され、理解者・ファンを増やす事が、企業の発展に繋がると言えます。

この事から、企業は社会の一員としての責任を遂行し、社会の要請に的確に応えると共に、積極的に方針や活動などの情報を発信すると言ったCSRに重きを置く企業が増えてきました。



2.広報活動は「社会との対話」が基本です


「広報活動」と聞くと、情報発信というイメージで捕らえられがちですが、社会との信頼関係を築くには、一方通行な情報発信だけでは築くことができません。

1:話す・聞くがセットになって初めて広報活動です
社会の人々が企業に期待するものは、時の流れと共に変化していきます。例えば自動車で言えば、以前は「スピード」「故障の少なさ」「安さ」で満足していたお客様も、「環境に対する性能」や「安全性」などを求めるように変化してきました。このように変化する要望や意見を的確に把握し、企業の経営理念や方針、営業活動に反映させなければ、お客様だけではなく社会の人々は納得してくれません。

そのためにも外部への情報発信ばかりに力を入れるのではなく、外部の情報を内部に確実に伝えて検討する「コミュニケーション」機能を持たなければなりません。一方的な自己主張ばかりではなく、知るための努力を払い、それを経営に生かしていく姿勢が必要なのです。「コミュニケーション」が継続して行われる事から社会との信頼関係は生まれます。

2:うそをつかない
これはもう、表記するよりも、先にニュースになった食肉偽装問題や、有名料亭での使い回しが告発され、責任者がついた嘘で、その後企業がどうなったかを見れば、企業側としてどうすべきかは、理解できると思います。
嘘は必ずばれます。




広報マニュアル:knowledge(03

3.報道機関の影響力


報道機関は、社会に影響を与える良い事・悪い事の全てを、素早く報道すると言う使命と共に、世論を形成する窓口として大きな影響力を持ちます。この事から取材に来る記者の背景には、数え切れない読者(視聴者・以下社会とします)がニュースを注視し、目の前の一人の記者から信頼を得られれば、その背景にいる社会からも信頼を得る事になります。社会は報道機関を社会情報の窓と言ったスタンスで捉え、報道機関というメディアを通じて企業の理念・活動・方針などを知り、企業イメージを構築してゆきます。




4.パブリシティと広告


パブリシティとは広報活動の中心的な仕事として認識されており、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどのメディアに向け、企業側から積極的にニュース素材を提供し、「記事」や「ニュース」として報道してもらう活動です。これはメディアなどを通じて間接的に、広く社会の人々に企業への理解を深めて頂く活動です。

これに対し広告は、社会へ向け企業が新聞、雑誌、テレビなどメディアのスペースや時間を買い、その中で企業自ら主張したい事を、企業の責任で表現し訴える活動です。

広報活動の中ではいずれも重要な活動ですが、この両者には大きな違いがあります。報道機関が社会的影響があると判断した報道であるか、無いかという点です。料金を払えば確実に情報提供できる広告に対し、パブリシティーに於いては「記事」や「ニュース」として取り上げるかどうかは、完全に報道機関の判断にゆだねられています。

それだけに、報道機関のニュースとして取り上げられた場合、記者という第三者のフィルターで、社会的影響があると判断された客観的な情報であり、報道機関としての信用もある事から、その内容の社会的信頼度や波及効果は絶大です。




5.社会(お客様)の声を聞く事


パブリシティと広告では、企業側から社会に向けたコミュニケーションの手段ですが、反対に社会(お客様)から企業に向けたコミュニケーション手段として、カスタマーセンターや、お客様窓口などがあります。また直接お客様とのコミュニケーションが取れる所では、直接ご意見カードに記入してもらったり、一定期間モニターとしてご意見を伺う活動があります。

お客様からの声の中には、製品やサービスに対するご意見ばかりではなく、苦情やクレームと言った面もありますので、窓口にはトレーニングされた専任スタッフが必要です。

また頂いたご意見に対し、迅速に答えが出ないと更に企業イメージを損なう事も考えられるので、どのように対処し、どのように改善策をとったか、担当部署との連絡方法、解決へのフローを事前に取り決めておく必要があります。

お客様から直接お話を伺う場合、お客様の個人を特定できる情報を得る可能性もありますので、個人情報保護法に則り、その情報の目的・管理・保護を明確にするために、プライバシーポリシーを作り公表しなければなりません。




広報マニュアル:knowledge(04

2:報道機関の基礎知識


広報活動の基礎知識でも報道機関が社会の窓として、情報提供・世論形成に大きな役割を担っていると述べました。今までの広報業務はマスメディア4媒体、新聞・テレビ・雑誌・ラジオへの露出がパブリシティの成果と見られてきましたが、インターネットや携帯電話など、新しいメディアの台頭により、既存メディアの優位性が揺らいでおり、広報業務に於いても変革を余儀なくされるでしょう。

新しい媒体の台頭があるとは言え、すぐに既存のマスメディアの優位性が新しいメディアと入れ替わるわけではなく、メディアリテラシーを見据えた上、複数のアプローチを実施していかなければいけません。

しかし実際のマスメディア4媒体については、あまり理解されていないのではないでしょうか。読者(視聴者)として新聞やテレビというメディアの認識はあっても、記事になっていく仕組み、特徴などはあまり知られていません。ここではマスメディア4媒体の種類と特徴について説明します。





1.新聞


●種類
新聞と言われ、まず頭に思い浮かぶのは、毎日家庭やオフィスに届けられる一般日刊紙、通勤時に良く読まれているスポーツ紙や夕刊紙など。新聞は全国各地で多数のものが発行されており、その総数5,256万部(2005年日本新聞協会調査)ちなみに日本新聞協会に加盟しているのは139社/2006年10月現在。一般日刊紙を分類するには 1:配布エリアによるもの 2:紙面内容によるものの2種類に分類されます。

配布エリアによる分類では、「読売」「朝日」「毎日」「産経」「日経」の5紙を日本全域を配布エリアとする全国紙と呼び、地方紙と大きく二つに分類する事が出来ます。地方紙はさらに県域を越えた広いエリアに配布しているブロック紙、単一の県域内を主たる配布エリアとする県紙、県紙よりさらに狭い地域を配布エリアとする郷土紙に分けられます。

また、紙面内容による分類では、一般時事を報道する一般紙、各種スポーツ・レジャー・芸能といった分野の情報を主体に紙面作りを行っているスポーツ・レジャー紙、特定分野に絞った専門誌、個別業界の動向を報じる業界紙といった分け方ができます。

このうち世論形成上、大きな影響力を持つのが一般紙ですが、レジャーや地域情報・趣味などのパーソナルな分野によっては、一般紙よりも他の紙面の方が影響力が強い面もあり、企業もニュースの内容によってふさわしいユーザーが読むメディアを選択しています。



●特徴
1:記事を書く編集部門と、記事の取扱いを決める整理部・校閲センター
新聞記者は編集局に所属し、政治・経済・社会・外報・文化・生活・科学・運動などの部署に大別され、部署名はほぼ新聞の紙面ページと連動して取材活動を行っています。

新聞記者が書いた原稿を取捨選択し、それを整理しタイトルを付け、紙面を作るのが整理部です。整理部は機構上、編集部門から独立しているので、ニュースの取扱いは、まったく独自の判断で行う事になっており、記事の取捨選択、紙面での取り扱いスペースの決定に、大きな権限を持っています。


2:経済部記者と社会部記者の違い
編集部門の中でも、企業との繋がりの深い経済部記者には、主に産業経済という視点から、業界・個別企業の問題点や将来の予測を論理と、経営者人事を始めとする人の話を中心に組み立て記事にします。これに対し社会部記者は、社会の出来事のすべてを生活者視点で記事にしますので、取材の仕方や記事のまとめ方もおのずと経済部記者とは違ってきます。

記者発表をする際に最も多く接触するのが、経済面を担当する経済部記者ですが、最近の傾向として、企業を一般大衆の生活者視点から捉えるという社会的要求が強くなったため、社会部記者の取材が増える傾向にあります。また、場合によっては、経済部と社会部の記者が部の枠を越えたチームを編成して取材し、経済・社会の両面からの視点で記事をまとめた、「特集」を組むケースも増えています。




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