RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

あり得ない風景を見慣れてしまったのか

数年前までの新聞広告や駅貼りのポスターのメインビジュアルは、写真一つ取っても空間としての空きや、モデルの表情一つにとっても、カメラマンやデザイナーの気迫を感じる作品が多かったように感じる。

今のポスターなどの広告は作品と考えてはいないのか、ただの消費される情報でしかないのか、心にフックとなる記憶に残る広告が少ないのが残念ではある。

人間の思う通りにポーズを付け撮影出来ない動物や昆虫などは、イラストやキャラクターとしてビジュアルとして登場していたが、今では3DやCGで思うままにポーズを取れるし、どんな荒唐無稽なシュチエーションでもビジュアルが作れるしムービーにもなる。

しかもロケの現場に行っても天候に左右されず、光の具合も思うがまま、撮影のためのお天気待ちしていた頃と比べれば効率は驚くほど高いですね。



ブリジストン・レグノ

例えば写真にある数年前のブリジストン・レグノのポスターだが、友人のADの作品で制作の裏話も聞いた。ローマの街一区画を撮影用にキレイに掃除し、路上の車を全部どけ、撮影用に道路に水を撒き、建物に照明を入れてもらうなど一つの街を買い取るくらいの金と時間と労力が掛かった作品だが、商品コンセプトの洗練された都市と静粛性がワンビジュアルで表現された良い写真であり広告だと思う。

現在ではその頃に作った大がかりで金食い虫だったビジュアル作成の反動なのか、有り物のレンタル画像を使ったものや、見る者をねじ伏せるようなカメラマンの拘りのような、力強いビジュアルは見あたらない。

しかしコンシュマーと言われる人たちに、毎食毎食ファミレスやコンビニ弁当のような、そこそこ美味しくいつでも食べられ便利でお手軽な広告ばかりで飽きられないのだろうか。

いつも食べるのは牛丼でもファーストフードでも、ナショナルチェーンが作る効率的に量産された食事でも、たまには丁寧に作られた、旬の食材を使った心に残る食事をしたいと考えるのが人情ではないだろうか。

多くの広告を出稿する企業は、次年度の年間予算を組む時に広告・PR計画など立案するのだろうが、低予算で見た瞬間に忘れ去られる広告ばかりではなく、中には見る者の心にグサリと刺さる、くさびのような強い表現のビジュアルを入れるようお願いしたい。

制作費は効率良くは作れないだろうから、チェーン店化したお店で食べるよりも多少割高ではあると思うが、たまに食べるととても美味しく感じられると思いますよ。




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