RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

サービス業としてのデザイナー

バブルの頃などはコピーライターが人気の職業でもてはやされたこともあり、同じ広告の制作という切り口からか、デザイナーもカタカナ職業としてもてはやされた時期がありました。でも平たく考えると、デザイナーも紙面の構成を考える一つのサービス業。

今でもそうですが、見てくれる人たちにどれだけ共感してもらえるか、ビジュアルの作り込みや完成度に強いこだわりを持って制作していました。でも以前まではCGや3Dなんて有りませんでしたから、イラストに凝ったり、ミニチュアを作ったりと、手間もお金もかかる物でしたが、今はデスクトップのPCと、ソフトを使いこなすスキルさえあれば、どんな荒唐無稽なビジュアルだって作り出せちゃいます。

デザイナーの作り出す制作物の完成度やクォリティーの高さは、そのまま自分をアピールするツールになり、それを見たクライアントや代理店から仕事の依頼が来ていましたが、今そのような形で仕事を取っている事務所は一握りだけで、多くのデザイン事務所は涸れてしまった川の流れを見、財布のヒモを堅く締め、雨が降るのを祈っているかのようです。


なんだか昔は街に沢山あった喫茶店の辿った道に似ています。

以前は若者文化の発信地的な扱いで、一日に何度も休憩や打ち合わせで利用し、結構個性的なランチを出してくれたり、コーヒーの専門店として特徴を上手く出したりと、一つの街でも色々なタイプの喫茶店が覇を競っていました。

ネルドリップで入れたコーヒーや、水出しコーヒー、コロンビアやグアテマラというような産地別のストレートコーヒーなど、こだわりと特徴を出していけば、高い家賃を払う一等地でもちゃんと営業できていました。でも今同じような形でお店をやるには、家賃や従業員の給料などの固定費を極力下げ、自宅を改造したお店を家族で切り盛りするような喫茶店しか残っていません。

コーヒーを飲みたければ画一的ですが、決まった条件ならば同じ味を出すことが出来る機械で、決められたマニュアル通りの入れ方をした、比較的な安価なコーヒースタンドや、ハンバーグショップが出すコーヒーで十分なのでしょう。


デザイン事務所も同じように、制作物の飛び抜けたクォリティーよりも、どちらかと言うと誰もが安心できる普遍的なクォリティーで、誰がどのようにして作ったかよりも、アルバイトでも誰でもかまわないが、そこそこのクォリティーを比較的安価で提供してくれるデザイン事務所しか、残っていけないのではないでしょうかね。

涸れた川はもう元のように水は流れることはないでしょう、水の流れは変わってしまったのです。

やれやれ、何か新しいことを始めないとだめだな。やっぱり。




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