RISE weblog

RISE Productionアートディレクターの佐藤です、仕事上で感じた事からプライベートな事まで、こちらのブログに書いていこうと思います。

技術革新は仕事の効率を上げたのか?

何を今さらでしょうが、家電製品でもクルマでもPCでも技術革新された商品は、旧来の製品と性能と言う尺度で比べると値段は下がります。二人で一日8時間働いてできる仕事であっても、とても性能の高い機械を使うことで一人が8時間で納めることが可能になったりします。その高い性能の機械がたくさんの製品に使われ、複合的に効率化が進むと一つの業種だけでなく、複数の業界を巻き込んだ広い範囲で雪崩を打ったように社会構造が変化してしまいます。

新聞・雑誌・放送と言った各メディアから、広告業界。もちろん印刷・グラフィックデザインを含む業界もその中に含まれ、仕事の合理化が図られ事業効率が高くなると共に、新聞や雑誌のモノクロページ用の写真をプリントしてくれるラボ屋や、写植屋とか版下を作る版下屋など、消えて言った職人と業種が沢山あります。

だからか15年前に出していた請求書の金額と、現在の金額では「写植代」「版下代」などの実費が計上されなくなったからか、売上に対する原価率が低くなり、殆どがデザイナーの人件費と家賃やリース料の固定費になってきました。そう「技術革新された商品は同じ性能で比べると価格が低くなる」です。カタログやPR誌などの制作費は15年前と比べるとヒトケタ位安く取引されているのではないでしょうか。

そのかわり、制作に携わるスタッフはライターさん一人きり、特別な撮影でない限り取材に行った足で話を聞いてメモを取り、鞄からデジカメとストロボを出して必要なものを撮影し、文章をまとめ、撮った画像と一緒にデザイナーへ渡して仕事終了。

デジタル機材の技術革新で仕事効率は驚くほど高くなりましたが、仕事の量自体は守備範囲が広がったことでかえって増えたような気もしますし、幾つかの業種自体が無くなり、その仕事に携わっていた人たちは、新たに別の仕事を探さなくてはいけなくなりました。仕事の効率が良くなったから、利益率が上がったのは確かですが、単純に外注費がカットされただけで豊かになったとは感じられません。

また、誰でもが機材を使いこなすスキルさえ持てば、そこそこの物は出来るようになりましたが、写真一つにしても露出さえ合っていれば、手ブレさえ無ければ良い写真かと言われれば、残念ながらNoと言うしかありません。

効率と言う名のもとに切り捨てた中に、どう撮影したらその紙面に合った良い写真になるのか、と言った技術者のノウハウも含まれていたようです。以前までは取材に行って伺った話を分り易く文章にすれば済んでいた仕事が、カメラを使ってキチンと撮影することまで求められるようになると、技術革新は便利になったのか、ただ忙しくなったのか判りませんね。

でもデザイナーの仕事としては確実に増えています。文中の漢字のかなの送りの統一(コピーライター)、FONTの購入(写植屋)、写真原稿のレタッチ(レタッチャー)、写真の切り抜き・色調整(製版屋)。などなど、以前は外注に出していたものも今は殆どのものがサービスとしてやらせていただいています。

これからも仕事の手数は増えて行くかもしれませんが、機材の技術革新で効率化できたように、それぞれの担当者が求められるスキルを上げ、事後処理や撮り直しなどの二重の手間を省くことも必要でしょうね。




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