- 2009/08/03 Mon
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以前のエントリーにも書いた事だが、最近新聞やテレビCMで心に残る広告がない。古き良き時代を思い出して「あの頃は良かった」などと愚痴りたいわけではない。その昔学生だった頃はグラフィックデザインは芸術作品とどう違うのか、デザイナーは芸術家なのかアーティストなのか。など学生らしい青臭い議論をした事もある。
確かにデザインという物は対象に情報を伝える事が目的であるから、沢山ある情報の中から伝えるべき必要な情報を整理し、限られた紙面の中にレイアウト出来ればそれがデザインである。企業戦略の手段とすれば、マーケティングから導き出されるビジュアルとコピーを使って表現する事は、非常に理にかなっており、誰からも文句の付け所はない。
しかしそのマーケティングから導き出されたモノは、多くの人がそれを望んでいると言う最大公約数的な数値としての評価であり、想定内のビジュアルで、コピーである。人間の心にある強く残る思い出は、けして普遍的な日常よりも、非日常的な苦しかったり悲しかったりした事の方が、後になって良く覚えていたりする。
対象のマーケットが望んでいるであろう表現をそのままストレートに出すのではなく、期待を一歩、イヤ半歩くらい先に行くような、期待を少し裏切る冒険を感じさせる表現の方が、見てくれる人たちの記憶にくさびを打ってくれるのではないだろうか。
正直言ってコーポレートガバナンスやマーケティングを理由に、自分が余り高く飛ばないように自主規制し、差別化と言いながら他社と大きく表現を変えずに、横並びの表現で満足している事はないか。何だか手段のためにモノを作っているように感じる、企業の考える理念を元にそれを実現するために目的が作られ、目的をかなえるための手段として広告や広報物があるのではないのか。
最近のWebを含め様々なメディアを使った広報物の中で、この「実現するための目的(フレームワーク)」が見えている企業は、私が思い出す限りファーストリテイリング社(UNIQLO)ぐらいしか頭に思い浮かばない。
確かに景気や社会情勢がジェットコースターにでも乗るように激しく動く中で、余り思い切った冒険は出来ないのかもしれないが、100年に一度の危機を 100年に一度のチャンスとして、様々な事にチャレンジする企業も出てきている。そんなチャレンジしている姿を周りの広報物に埋もれない、記憶に残る広報物が出来るように、リーダーはフレームワークを構築しなければいけない。
記憶に残る広報物をを生み出すのはマーケティングのコンセンサスではなく、こう表現したいというリーダーのフレームワークや信念であり、その表現が正しいかどうかは、事後的に市場で実験するしかない。他に比べ一歩前に出るという事は、整理し、キレイに見せるといった技術やテクニックではなく、心を動かすような美しさを持つアートに近いモノだと思う。
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