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素人の時代だと言うけれど

前回のブログで、フィルムで写真を撮るという行為に関して突き詰めていけば「化学」と書きましたが、つい何年か前までは、感光剤であるフィルムの感度はASAとかISOと言われた基準で100とか400のフィルムが流通していて、レンズの明るさf=2.8とかf=5.6とかだと、35mmカメラの標準焦点距離と言われる50mmのレンズを使い、絞り開放でも明るい夕方ぐらいでしか手持ちで撮影など出来ませんでした。

広角レンズで35mmや28mmと言った焦点距離のものでしたら、シャッタースピード1/30秒でも手ぶれはそれほど目立たない写真が撮れたかもしれませんが、135mmとか200mmの望遠レンズなどでは、手ぶれさせない技術を持った人か、運を味方に付けるしか手持ちでの撮影フィルムを仕事で使うにはリスクが伴うものでした。だからチャンとした写真を撮るために、スキルと技術を持ったプロにお金を払って撮影してもらっていました。

でもいまのデジタルカメラは人が持っていたスキルと技術を、カメラ自身が持つようになり、手ぶれ防止デバイスや感度を上げることによって普通の風景などを撮るだけでしたら、誰が撮ってもちゃんと撮れるようになり、細かいディティーにさえ目を瞑れば仕事用の写真でも使えるようになりました。

私の仕事のグラフィックデザインや、映像関係でも同じようなことが言えるようです。誰でもPCとソフトをを使いこなすスキルを持てば、デザインできるし映像も作れます。

作れるけれどそれは記録でしかありません、印象に残るものを作るためには意図とするものを象徴的に表現する力が必要なのです。写真で言えば手前の静物を撮るにしても背景を柔らかくぼかして表現するとか、背景と人物両方にピントが来るように表現するとか、こう言う写真を撮るためのテクニックが必要です。

デザインでもそうです、お客さんとの企業リポートの事前打ち合わせで、かなり長い文章を全ページ通して読みやすく表現することを一番に考慮し、本文の書体や文字の大きさ、行間にいたるまで全体のフォーマットをプレゼンして通し、すでに実作業に入っていますが、今になって別の部署からクレームが来ていると連絡がありました。現在進めている本文の書体、明朝体からゴシックに変更して欲しいと。

長い文章を読みやすい書体で表現するのは、現在文字として流通しているモノを調べてみれば判りやすいでしょう。小説は?文庫本もそうだし、新聞の本文はどんな書体が使われていますか、文字を読む人間がどんなものを受け入れているのか、読みやすさを考えるのだったら色々と使われて淘汰されて、残ったものを使うのは当たり前。印刷されたものを長年見ているからこそ解るものはたくさんあります、昨日今日PCでレイアウト出来るようになった人が、思いつきで話しをしそれを選んだ理由をきちんと説明するのにも最近疲れてきたよ。

企業としてキチンとしたものを作っていくのは当たり前のことだけど、クライアントの担当者がデザインのディティールまで口を挟むことではないのではないか、表現するうえでもっと上流の、何の話をどうやってや、表現の方向性についての社内コンセンサスなど、専門領域は専門家に任せて、全体を俯瞰してハンドリングすることの方が大切だと思うよ。

担当者に言われてハイハイとただ聞いてくるだけの代理店の担当者も呆れて物が言えないが、こちらはもともとハウスエージェンシーで他所との競争が無い分、処世術なのか物を考えない性格なのか解らないけれど、そんないい加減に物事進めて作ったもので賞を取りたいと聞くと、素人とは言え物事を知らなすぎなこの業界人を見て、デザイナーの仕事を続けていく気力が失せます。トホホ。




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